志津川第一工場/佐々木和也
−−業務内容を教えてください。
まずは、営業所やお客さまからいただいた受注を工場に下ろして、作業の生産計画を立てる生産管理。どのお客さまにどのぐらいの量を、いつまでに納品するかということを、注文に応じて作業に組み入れます。在庫管理や設備管理も行いますし、製造段階では原料の選別から行っています。業務はほぼ全般に渡ります。
−−原料の選別というのは、海苔を選ぶということでしょうか。
その前に、まずは買い付けがあります。海苔には各漁連が決める等級があるんですが、各県によってその呼び名は違って、例えば宮城県だと「優A」「優B」といった等級付けがあります。そうした等級ごとに分けられた海苔の中から、社長が現地で色目などを見て選んで買い付けます。そこで買ってきたものに対して、選別を行うということです。
−−なぜ選別が必要なのでしょう。
宮城県の場合、11月から毎週金曜日が入札日で、4月ぐらいまでで十数回行われます。海苔は生き物ですから、常に同じものが取れるわけではありません。水温の変化もあって、取り始めの「優A」と4月の「優A」では、同じ等級でも色味が全然違うこともあるんです。それらの中から、それぞれのお客さまのオーダーに応じて取り分けるのです。
−−どうやって選別するのでしょうか。
生で見てまずは判断します。工場長は味見もしています。あとは、海苔巻きにすると変色するので、必ず「巻きテスト」を行います。実際に酢飯を巻いたり、濡らしたティッシュを巻いたりしてどう色が変わるか。紫に変わるようなものはクレームになるので除外します。ただ、良い悪いというのを一概に言えるものでもありません。例えば、海苔が「硬い」と言われる場合もありますが、「硬い」というのにも個人差があるわけです。
−−なるほど。お客さまによってはその硬さを求められるケースもあるんですね。
はい。例えば軍艦海苔はある程度硬いものでもいいんですが、手巻きやおにぎりは硬いと良くない。そういう用途に応じても選別しなくてはいけませんし、もっと言えば好みの食感は人によって随分違うんです。ですから、個々のお客さまが求めている味や硬さを理解して、その後は同じような品質のものを提供するということを心掛けています。
−−ほかにも難しい部分はありますか。
一番は、生産者さんによって品質に差が出てしまうということです。例えば同じ南三陸町でも、川に近いところに漁場があるのと離れたところに漁場があるのでは、栄養分が異なって色が若干違ってきます。多くのお客さまは年間契約で「この原料を」と指定してくださるのですが、同じ原料でも時期や浜、生産者さんによって違いが出てくるので、その中で一定の品質を保つために慎重に選別しなくてはいけません。
−−常に同じ生産者さんから、というわけにはいかないんですね。
もちろんそれができればいいんですが、入札形式ですので、値段によって取れない場合もありますよね。そもそも、浜単位での入札なので、その浜には生産者さんが何人もいらっしゃるわけです。東松島市宮戸の「優A」が300本あるとします。それは、各生産者さんが20本や30本ずつ生産した海苔の集まりなので、同じ等級、同じ時期、同じ浜でも違いが出る。「優A」と一口に言っても、そうした幅があるんです。
−−その中で品質を揃えるというのは非常に大変ですね。
初めて聞くと驚かれるでしょう? ただ決まった等級のものを、必要な量だけ買い付けてきて焼けばいいというわけではないんです。海苔の選別はその後の製品の仕上がりに関わってくる部分ですので、非常に重要なんです。